橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

世田谷「酒の高橋」

classingkenji2008-05-08

世田谷区役所のあるあたりの地名が世田谷区世田谷で、最寄りの駅は東急世田谷線の世田谷駅。世田谷線は、渋谷と二子玉川を結ぶ路面電車だった玉川電車(玉電)の支線として生まれたもので、三軒茶屋と下高井戸の間、約五キロを結んでいる。現在でも環七を渡るところだけは路面電車で、信号に従ってゴーストップする。小さな車両の二両編成で、一〇〇人も乗れば超満員。沿線には、松陰神社前豪徳寺、下高井戸など、下町的な雰囲気の商店街が散在する。
世田谷駅を降りて少し南に下ったところにあるのが、この店。カウンター九席、小上がりに四人掛けの小さなテーブルが四卓という小さな店で、六時にもなれば満員になる。客の大部分は、普段着姿の地元の中高年男性で、ジャンパー姿や野球帽など、下町大衆酒場的な雰囲気である。話題は、近頃の気になる事件とその顛末について、季節の食べ物や料理法について、懐かしのタレントのその後など。ときには店の人も加わりながら、和やかに話している。お通しに、日替わりの手作り料理が出てくるのがうれしい。たとえばワラビと厚揚げの煮物、あさりの酒蒸し、秋刀魚の一夜干しを小さく切って焼いたものなど。たいていの人が注文するのは刺身の三点盛りで、中身は日によって変わり、六〇〇円とは思えない量がある。山菜や魚の天ぷらも、三〇〇円台と安い。(2008.4.17)

世田谷区世田谷3-1-26
17:00-22:00 第3土・日祝休