橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「酒とつまみ第10号」「モツ煮狂い第二集」発売記念イベント

classingkenji2007-12-18

雑誌「酒とつまみ」とは、知る人ぞ知る全編酒の話だけという雑誌で、別のブログで紹介したことがある。「モツ煮狂い」については以前このブログで、入手できる場所についての情報を募集したところ複数の方からご助言を戴き、ある図書館で閲覧することができた。その最新号が発売されるというので、「酒のつまみ」編集長の大竹聡さん、「モツ煮狂い」作者のクドウヒロミさんを招いたトークイベントが開催された。場所は千駄木の古書ほうろうで、司会進行はライターの南陀楼綾繁さん。入場料を払い、ホッピーと焼酎の入ったコップを渡されて中に入ると、古本屋の奥に三〇人ほど座れるスペースが造られている。南陀楼さんの軽妙な進行で、創刊の頃の思い出、なぜなかなか最新号が出ないのか、酒の上での失敗のお話、好きなもつ焼き屋について、次号の抱負など、爆笑ネタを交えながら二時間ほどのトークだった。休憩時間には、クドウさん手製のもつ煮込みが売られ、天羽乃梅とニホンシトロンのハイボールが振る舞われた。クドウさんは、文章からなんとなく古いタイプのオタクのような物静かな人物を想像していたのだが、意外に明るい感じの好青年。第二集は、第一集にもまして都市論的色彩が強く、大変面白い。もともと大学院で都市論を専攻されていただけあって、数々の文献を渉猟した蓄積の上で語られる下町食文化論は、なかなか奥が深い。どちらも、いちばん売り上げが多かったという書肆アクセスの閉店で販路が狭まりそうだが、南陀楼さんのお話では神保町の三省堂書店に地方小出版のコーナーができるらしいので、そこに期待しよう。(2007.12.12)