橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

志村三丁目「エビス参」

classingkenji2010-05-10

小金井をあとにして、どこで飲むか考えたのだが、結局古巣の板橋へ行くことにした。まず上板橋へ行くと、道で「もつ九」のママとばったり。聞くと、四月十五日開店予定だとのこと。ママもこのブログを読んでいるとは意外だった。「裕ちゃん」に寄ってから、歩いて志村へ。途中、以前住んでいた団地を通ったが、全然変わっていない。お隣さんも、そのまま住み続けておられるようだ。
志村三丁目の駅へ行く途中に、なんと「エビス参」がある。世田谷を中心に店が増えつつある小規模チェーンのもつ焼き屋だが、こんな場所にできるとは。当然、入ってみることにする。正面にL字型カウンターがあり、手前と右側にテーブル席がある。けっこう広い。このあたりは居酒屋不毛地帯で、だからこのあたりに住んでいた頃、少し遠くなる上板橋駅周辺で飲んでいた。そもそも団地の住民には、仕事のあと、家のすぐそばまで来て居酒屋に入ろうなどとする人が少ない。だから商売は楽ではないと思うのだが、けっこう人が入っている。
料理の値段は「エビス参」の普通の価格のようだが、酒が安い。三冷ホッピーは四〇〇円、週一樽の限定だが、生ホッピーは四二〇円、瓶ビール五二〇円、生ビール四九〇円、生レモンサワー三五〇円で、他の店より一割以上安い。というより、他の店が高すぎるので、大衆酒場の値段としては当然だろう。今でも住んでいたら、毎週行っていたかもしれない。この地域のモツ好きには、救世主のような店である。(2010.4.1)

板橋区相生町2-3
16:30〜23:00 無休