橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ます屋

classingkenji2007-12-17

ここも、最近増加中のチェーンの串焼き屋。池袋西口の西1番街中央通りにある。経営は二子玉川に本社があるフロンティアグループで、「まんまみーや」「橙庵」など九業態を展開している。ホームページによると、年商はグループ全体で一五億円。正社員九〇名、アルバイト約一〇〇名と、アルバイトの比率が意外に低い。この「ます家」は立ち飲みスタイルで、串焼きの他、おでんや煮込み、刺身などを出す。焼き鳥、焼きとんは一二〇円から一四〇円、もつ煮込みは四三〇円。飲み物はキリンラガーの中ジョッキが四三〇円、ホッピーが四〇〇円、中お代わり二〇〇円、酎ハイ類三四〇−三八〇円。焼酎が数十種類と多く、三五〇から五五〇円。立ち飲みにしてはさほど安くないが、もつ焼きはまずまずの味。串焼きは、新鮮な材料を使い、炭火でていねいに焼けば、そこそこ美味しいものができる。だから、比較的簡単に店を開くことができるのだろう。チェーンのやきとり屋が増えるのは、このためだろう。客はサラリーマンを中心に、若者が混じる構成。ちょっとした空き時間にホッピー一杯と串焼き二−三本だけ、というような使い方にはいい店だ。しかしこういうスタイルの店は、ねじりはちまきのおじさんとエプロンつけたおばさんがやっていたほうが、気が和むというものなのだが。一般にチェーン店では、店員をひとりの個人として認識することができない。ということは客も、一人の個人としては認識されないということだ。だから、店のなじみになるということがないし、愛着もわかない。したがって、地域文化の担い手とはなり得ないのだ。(2007.12.11)