橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「きくや」と小沢辞任

八時頃、仕事を終えて下高井戸へ。「きくや」でハイボールとホイスを飲む。肴は、そろそろ美味しくなってきた金目鯛。相変わらず、地元の中高年でにぎわっている。奥の座敷では、学生たちが大騒ぎしている。入り口をはさんで両側に分かれる構造の店だから、おだやかに談笑する中高年と学生グループが共存できる。中年男が連れを相手に政治の愚痴を言っている。「小沢が急にやめるなんて、どうなってるんだ。オレ、もう民主党支持するのやめた。」この夜、全国の何千という居酒屋で、同じことを言った中高年男がいたはずである。(2007.11.4)