橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

高円寺「四文屋・大一市場店」

classingkenji2007-11-04

今日は出版社の編集者とともに、高円寺へ。今回は、とくに具体的に企画があるわけではなく、ほとんど出版情勢やら新書の現状についての雑談だけ。行く店は決めていなかったのだが、北口をぶらぶら歩きながら店を物色していると、「四文屋」の看板が目に入る。ガード下の方は行ったことがあるが、こんなところにもあったのかと思わず入ったのが、この「四文屋・大一市場店」である。この市場自体が、なんとも昭和の雰囲気で、味がある。向かいはラーメン屋で、四文屋から出前も頼めるというところがいい。メニューは、他の店と同じだ。ホームセンターによくある千円くらいの木の椅子、チープなテーブルで、もつ焼きを食べる。編集者も、安くてうまいと喜んでいた。客は、若者が多い。中央線沿線はたいていそうだが、地元の若者たちが地元で飲んでいて、町に活気がある。居住地立地型の盛り場といえる。小田急線沿線は、下北沢を除けばこうはいかない。地元住民は新宿など都心で買い物をし、食事をしたり酒を飲んだりする傾向が強いし、そもそも若者が少ない。駅前に大規模な商業施設がないのも、町の活気を維持するのに役立っている。団塊世代は、若いうちは高円寺・吉祥寺・国分寺の「三寺」に住み、後には埼玉や千葉へ転居していったといわれる。今の若者たちは、いつまで中央線沿線にいるのだろうか。(2007.11.2)