橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪・梅田「松葉・総本店」

classingkenji2007-10-31

今日は、日本福祉大学のスクーリングでゲスト講師を頼まれ、大阪へ。「現代日本の格差拡大と貧困層」というテーマで3時間ほど話したあと質疑応答。受講生は、西日本・北陸各地から集まった福祉関係者が多く、大変熱心に聞いてくれた。講義のあと、担当講師の訓覇法子さんとともに梅田へ。まずは「がんこ」で軽く食事したあと、女一人では入れない大衆酒場へ行きたいという訓覇さんの希望に添って、新梅田食道街の立ち飲み串かつの店「松葉・総本店」へ。二度付け禁止のソースにつけて食べる串かつは、もっとも大阪らしい大衆酒場のスタイルだが、この店は大阪駅のすぐそばにあるので、行き帰りにちょっと飲むのに便利。大阪へ来たときにはたいがい、ここに立ち寄ることにしている。
種類の多い串かつは、値段が一〇〇円、一一〇円、一二〇円、一五〇円と三段階。それぞれ、串の長さや形が違う。いちばん高い一五〇円は、骨付きの若鶏と旬のカキ。ビールはサントリーモルツで、中生が四五〇円、大瓶が五〇〇円、プレミアムモルツは中瓶で五〇〇円。調理場を囲んだ大きなL字型カウンターがあり、その背後にはテーブルが三つ。客は中年男性の一人客か二人連れが中心だが、若い女性の三人連れも。こういう店に若い女性が連れ立ってくるというのは、大阪らしい。男性客で特徴的なのは、野球帽をかぶった人が多いこと。これは、東京の下町と共通だ。ネクタイ姿のサラリーマンもいるが、少数派。新世界の串カツ店などは、なじみのない人には入りにくいが、ここなら少し勇気を出せば入れるはずだ。大阪の大衆酒場入門編にどうぞ。(2007.10.27)