橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

人世横丁「げんき」

classingkenji2007-10-07

忙しい一日を終え、久しぶりに池袋へ。まっすぐ、人世横丁へ向かう。今日の目当ては、六月二一日にコメントを書いてくださった前田さんの行きつけという立ち飲み屋の「げんき」。店に入ると、人世横丁の公式ホームページに写真が載っているご主人が「いらっしゃい、初めまして」とおっしゃる。客の顔をすべて覚えていてるという自信がないとできないことだ。「横丁は初めてですか」「いや、何度か来てます」。まずは、ヱビスの生ビールをいただく。狭い店内には、何十種類もの焼酎が所狭しと並べられている。珍しいものも多い。菊姫の「加洲劔」、波照間島の「泡波」、「佐藤」の原酒など。ビールのあとは、前田さんが毎回のんでいるという、奄美黒糖焼酎「まんこい」を注文。普通のものと古酒の二種類があるとのことで、ご主人は普通のもののグラスに、古酒を猪口に一杯、サービスでつけてくださった。まろやかで美味い。これなら、飽きずに飲み続けられそうだ。料理は串焼きが中心で、豚、鶏、ホタテ、つぶ貝、鰻のくりからなど。刺身や酢の物など、ひととおりのものはある。
お客さんは常連が多いらしく、別々に入ってきた人たちが親しげに言葉を交わしている。前田さんに教えられてきたというと、横で飲んでいた若い女性が「前田さんとはどういうお知り合いですか」という。「いや、会ったことないんです。ネットで教えてもらったんですよ。」ご主人が応じる。「ブログですか。」「そうです。」ご主人は、良い焼酎を人に飲ませるのが楽しくてたまらないご様子。「佐藤」の原酒は初めて見ました、というと、それならと、お猪口で一杯サービスしてくださった。そんなわけで、久しぶりに美味しい焼酎の飲み比べを楽しんだ。人世横丁にまた一軒、行き先ができた。(2007.10.5)