橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

銀座二丁目「バニュルス」

classingkenji2007-09-02

catalan bar Vinulsと表記する。つまり、カタルーニャ風バルである。店頭は立ち飲みコーナーで、奥にはカウンターと丸テーブルが五つほど。丸テーブルには椅子が二脚だけで、三人目からは立って飲むことになる。二階はテーブル席のレストランになっているようだ。料理がバラエティに富み、しかも安い。トリップの煮込み、タコのガルシア風、焼き野菜とイワシのコンフィ、トルティージャ、魚介類や肉の鉄板焼き各種などが、いずれも五〇〇円。焼き野菜とイワシのコンフィは彩りも良く美味。田舎風パテ(六〇〇円)はコースの前菜にもなりそうな逸品だった。いちばん高い料理はイベリコ豚の鉄板焼きで一四〇〇円。グラスワインは五〇〇円から九〇〇円。ボトルだと三〇〇〇円から六〇〇〇円程度。
客は、クールビズ姿のサラリーマンと、色とりどりの服を着たワーキングウーマンたち。銀座の中心部近くでこんなに安くおいしいものが食べられるなら、人は集まる。満員になると、野外にも席ができる。その分を見越したのか、スタッフの数が多い。内装も現地風のいい味を出しているが、カウンター正面に取り付けられたワイン箱の板がすべてフランス産なのはご愛敬。最近流行の立ち飲みレストランの中でも、注目の店だと思う。二丁目の西五番街(中央通りから有楽町方向へ二本目)で、立ったまま楽しそうに飲食している人が目に入るから、すぐ分かる。(2007.8.31)