川本三郎『我もまた渚を枕』
何冊目かになる『東京人』連載の単行本化。川本さん、今回は東京の近郊、船橋や銚子、岩槻などといった、ちょっと足を伸ばした場所を一泊二日でめぐり歩いている。文学と映画への造詣を背景に、私のような凡人ではとても発見できないだろうと思われる、古き時代の痕跡を、実によく発見する。そして、いい居酒屋をみつけ、実にうまそうにビールを飲む。そして居酒屋で、地元の人とよく話す。地元出身の女優の話をすると、みんなが話に乗ってくる。今回訪ねたのは一六の町や地域だが、このうちのいくつかは、近い将来私も行ってみたいと思う。もちろん、居酒屋にも。写真は鈴木知之。二人は完全に別行動で取材しているため、文と写真に若干の齟齬がある。川本は大の猫好きだが、鈴木はむしろ犬の方が好きなようで、文章にはよく猫が出てくるのに、写真に出てくるのは犬ばかり。猫好きとしては、そこが少々残念ではある。なおタイトルは、島崎藤村の「椰子の実」からとったもの。こんな気の利いたタイトルをさりげなく付けるところも、さすがである。
- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 単行本
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