橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「名酒センター」

classingkenji2006-11-12

今日は「月刊ビミー」のインタビューで、浜松町の「名酒センター」へ。近くまで行くと、代表取締役の武者英三さん(写真右)が、店の前で待っていて出迎えてくれた。「名酒センター」は、株式会社ヤングマーケティング研究所の経営する日本酒のPRセンターである。昔銀座に、「日本酒センター」というPRセンターがあり、その一階で試飲・販売をやっていたが、この試飲・販売部門を後継する民間企業といった位置づけらしい。
「月刊ビミー」というのは、武者さんが編集する日本酒のPR紙。タブロイド判十二ページで、全国の酒屋や料飲店で販売されているとのこと。阿部譲二のコラム、武者さんの酒蔵訪問記、業界の近況レポートなど、日本酒に関する情報が満載で、この二−三面に連載のインタビューがある。これまでにインタビューが掲載されたのは、作家やアーチスト、タレントなど多士済々。そこで毎日新聞の記事とこのブログを読んだ武者さんが、私に目を付けてくれたというわけである。ちなみにインタビュー謝礼は、日本酒六升とのこと。いいねぇ。
まずはお酒ではなく、お茶をいただきながら、私の酒歴やふだん飲む酒、好きな酒、外で飲む回数などについて尋ねられ、話は次第に酒と格差社会の話題へ。それぞれの階級が、いろんなタイプの居酒屋で棲み分けているという話、サラリーマンやOLのふだん通う店がだんだんダウングレードしてきているという話、そして格差がこのまま拡大すると、日常的に居酒屋へ行って酒を楽しむことのできる層が縮小し、酒業界全体が危機に瀕するのではないかなどと話をする。武者さんはうんうんと頷きながら、記事の構想を頭の中でまとめていらっしゃるようだった。
話の途中から、お酒をいただく。この店は基本的に、五百円で小グラス三つに三種類の酒が試飲できるというシステム。この日、私がいただいたのは、東京・福生の「嘉泉・田むら」、静岡の「臥龍梅」、そして「越乃寒梅」の吟醸。どれがいちばんお好きですかという武者さんに、「田むら」だと答えると、わが意を得たりという表情をなさる。実はこの酒、武者さんがプロデュースした酒で、造りからアルコール度数まで、自分で指定されたとのこと。どちらかといえば甘口に近い酒だが、すっきりしていて香りがよい。豊かな吟醸香があるが、果実臭だなどと単純にいえない、心地よい香りである。
今日は店の入り口の方のテーブルで、日本酒勉強会というのをやっていた。こうしたイベントが、月に一回くらいあるらしい。保冷ケースには、全国のいろいろな酒が百数十本くらい並ぶ。しかも、どこにでもあるような有名ブランドではなく、丹念に選び集めたという感じの酒ばかりだ。しかも五百円で三種類試飲でき、気に入った酒はその場で買えるというのだから、すばらしい。近くに職場があったら、足しげく通うだろう。これからは、都心に出たときにはときどき立ち寄ることにしようと思う。皆さんも、ぜひ行ってみてください。ホームページは、次の所にあります。
http://www.bimy.co.jp/