橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

江古田「山下家」

classingkenji2015-11-06

この日は、大学で授業をしたあと、江古田の行きなれた理髪店へ。髪を切ってから居酒屋を物色していると、住宅街に少し入ったあたりに、見慣れない店がある。店頭には「龍力」「石鎚」「奥播磨」などの日本酒の瓶が並び、一品料理の充実したメニューも。これは、入らないわけにはいかない。
ビールでのどを潤しながら、メニューを見ると、本日の刺身が七種類あり、一人前九八〇円だと、このなかから五種類が選べるとのこと。これは、うれしいメニューだ。さっそく鯛の松皮造り、かますの焼霜造り、〆鯖、甘海老、生蛸を盛っていただくことにする。出てきたのは、各二切れずつ(甘海老は二本)、きれいに盛り付けられた一皿。これが九八〇円とは安い。しかも、味もいい。「開運」のひやおろし(八五〇円)をいただいて、堪能する。
おばんざいが九種類あり、こちらも三品九八〇円とのこと。そこで蟹酢、柿の白和え、京厚揚げと野菜の炊き合わせをいただくことに。それぞれにあった器に盛り、丸盆に乗せて運ばれてきたその味は、なかなかに品がよく、量も一人でいただくには十分。さらに「醴泉」(六五〇円)と「十九」(六五〇円)をいただいて、大満足。
聞けば、昨年の暮れにオープンしたとのこと。主人はおそらく三〇歳代。どこかできちんと修行をした、腕のいい板前のようだ。江古田に新名店誕生である。(2015.10.23)

練馬区栄町21-10
17:00〜23:30 水休