橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

高円寺「関根精肉店」

classingkenji2011-04-20

仕事の帰り、高円寺でちょっと飲むことになって、駅の当たりを歩いていて、見つけて入ったのがこの店。店構えと内装は、見るからにという感じだが、エー・ピー カンパニーが浜倉的商店製作所の浜倉好宣の協力を得て展開するチェーンである。
最初に「肉刺し いいとこ盛り」(一六八〇円)というのをいただいた。霜降り、馬刺し、ハツ、レバなど六種類で、鮮度は申し分ない。ホルモン焼き(九八〇円)は、分厚く脂がのったもので、キャベツとともに供され、テーブルの鉄板で焼いていただく。生ビールは五五〇円、ホッピーセットが四八〇円、サワー・ハイボール類は四五〇円前後と、安くはないが飲み屋ではなく料理店と考えれば普通の値段。
ちょっと目を引いたのが、メニューの裏に書かれた内臓肉の仕入れの仕組み。内臓肉が公開された市場には出まわらないこと、一部の内臓専門卸売業者による取引が中心になっていること、良質のものほど、コネによる流通に依存していることなどが説明されている。業界の裏側をこんなに率直に説明したのは、見たことがない。ほかに、三軒茶屋、八王子に店があるらしい。(2011.3.3)