橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ウィーン「ワイングート・ラインプレヒト Weingut Reinprecht」

classingkenji2012-09-14

ウィーンの二日目は、ハイリゲンシュタットへ。ベートーベンが夏になると訪れたウィーン郊外の保養地で、「田園」や「英雄」の構想を練り、また遺書を書いたことでも知られる場所である。「田園」の第二楽章に描かれているといわれる小川にも行ってみたが、予想よりはるかに貧弱で、小さな排水路のようなもの。ちょっと拍子抜けしたが、気を取り直して近くのホイリゲ街、グリンツィングへ。店をいろいろ物色した末、入ったのがこの店。
店の前面は、写真のように花が飾られて美しく、この下の入り口から入り、売店などのある通路を抜けて中庭へ。椅子やテーブルは安物だが、開放感あって気持ちがいい。ビールもあるにはあるが、ここではやはりワインだ。看板のホイリゲ(その年にできたばかりの若ワインだが、保存されているので、多くの季節に飲むことができる)は、四分の一リットルで三・二ユーロ。それほど甘くなく、すっきりと美味しい。熟成したワインも数種類あり、やや高級な二〇〇六年の赤ワインは八分の一リットルで四・二ユーロ。客席にはアコーディオン弾きがいて、常連客が歌ったりしている。客は、どちらかといえば観光客中心のようだ。(2012.8.19)

Cobenzlgasse 22 Wien