橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

花見 in 砧公園

classingkenji2011-04-11

砧公園は、世田谷区では駒沢公園と並ぶ主要な公園である。いちばん近い駅は東急線の用賀で、ここからだと歩いて一〇分少々。小田急線だと千歳船橋祖師ヶ谷大蔵がほぼ同じくらいの距離で、歩くと二五分くらいかかる。もとは都営のゴルフ場だったとのことで、起伏があり、変化に富んでいる。
ここが、私の家の近所では最大の花見スポット。東日本大震災を「天罰」と言い放ち、花見を自粛しろなどとのたまう老人がいたが、都民はいつものように花見に来ている。家族連れと若者のグループが多い。私が持ち込んだのは、この酒。陸前高田の「酔仙」である。この酒を飲みながら花見をするのは、もしかするとこれが最後になるかもしれない。地酒は地元が主な消費地だから、地元の復興が進まないと、酒蔵は復興しない。同じことは、さまざまな地場産業にいえることだ。支援するためには、東京のような大消費地が、復興するまでの間は消費を代行する必要がある。その手助けをしたい。「酔仙」の場合は、蔵そのものが消滅しているから何ともし難いが、出荷の再開を準備している蔵はいくつもある。当分は、被災地の酒を飲み続けることにしよう。(2011.4.10)