橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「はが屋」

classingkenji2010-05-05

サッポロの株主総会に出たあとは、昼から飲むことに決めていた。恵比寿で昼から飲むなら、定番の店は「たつや」だが、新しい店も開拓してみたい。ところが、適当な店が見つからない。そこで渋谷まで移動し、井の頭線のあたりを物色した末、前から気になっていたこの店へ入ることにした。夜はいつも満員で、なかなか入れない店である。
看板には「豚もつ焼き・豚しゃぶ・博多もつ鍋」とある。ホッピーが五〇〇円で、中三三〇円、サワー類も五〇〇円。ずいぶんな値段である。豚は銘柄豚で、レバーとシロが一九〇円、カシラとタンが三五〇円と、ちょっと見たことがないくらいの値段だ。私見では、銘柄肉と普通の肉の味の違いがはっきりしているのは牛肉・鶏肉で、豚肉は差が小さい。三本ほど試してはみたが、値段ほどうまいわけではない。これに比べるともつ鍋は、良いもつを使っていて量も十分だから、こちらを注文するのが良さそうだ。
平日の昼間だから、客は少ない。コギャル風(死語?)の女の子が、初老の男におごってやるとナンパされたらしく、きゃあきゃあ言いながらビールを飲んでいる。渋谷の二つの側面が出合ったという風景である。(2010.3.30)