橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

板橋「隗」

classingkenji2009-11-16

JR板橋駅の東側は、かつて大規模なヤミ市があった場所で、駅前ロータリーの周辺に、当時の面影を残す飲食店街がある。これに対して西側は、比較的落ち着いた雰囲気だが、線路にへばりつくようにバラック飲食店街が残されている。
「飲み物 つまみ 全品100円」「ホッピー100円」などと書かれた看板もあるが、惜しくも閉店したようだ。さらに奥に入ったところの店先には「店のシンボルの看板ぶった切られ、のれんをこわされ、玄関に穴あけられて、商売出来ません。ケイサツが入ってますので、お客様にはしばらくご迷惑をおかけ致します。」という貼り紙がある。何があったのか知らないが、ちょっと物騒だ。
この飲食店街の中ほどにあるのが、この店。店名は「かい」と読む。店は、たいへん狭い。看板には「立飲み」とあるが、いちおう椅子もあり、L字型カウンター五席ほど。混んでくれば立飲みに移行して、八人くらい飲めそうだ。生ビール四五〇円、ホッピーセット四〇〇円、焼酎がシングル二二〇円、ダブル四〇〇円から。煮込み、串焼き、刺身など、簡単な料理がいろいろある。見かけに反して、味は悪くない。常連だけの店のようだが、初めて入っても普通に応対してくれた。近くに住んでいて、気になっている人、安心して入ってみましょう。ヤミ市ファンなら、遠出してでも行ってみましょう。(2009.10.23)

北区滝野川6丁目86-10
16:00〜25:00 月休