橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「菊三八」

classingkenji2010-01-29

新橋東口にある新橋駅前ビルは、当時まだ残っていたヤミ市直系の飲食店街を再開発して、一九六六年に完成した。その地下街は、細い路地が入り組んで、元の飲食店街をそのまま地下に移設したような趣がある。ヤミ市起源の雑居ビルは数あるけれど、これほど昔の姿を濃厚に残したところはない。そのなかでもメインストリートに位置した、大きめの店がここ。
焼鳥・もつ焼き・もつ煮込みと刺身の他、普通居酒屋にあるような料理はたいがい揃っている。串焼きは大部分が一四〇−一六〇円で、一品料理は四〇〇円台から六〇〇円台までがほとんど。ビールは大瓶が六三〇円、生が五九〇円、酒は岩手の「あさ開」で、大徳利が六九〇円、冷酒が八三〇円、サワー類は四〇〇円。
客はもちろん、ほとんどがダークスーツのサラリーマン。新橋らしい典型的な居酒屋で、玄関と中だけ見ると、地下通路にあるとは思えない。名物らしいものがあるわけでも、とびきり美味しいというわけでもないが、ともかく安定感のある新橋の居酒屋である。(2010.1.8)

港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館B1F
11:00〜23:00 日休