橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

千歳烏山「なんで・や」

classingkenji2007-07-05

二軒目はどこにしようかと、千歳烏山の町をしばし徘徊。見つけたのが、この店である。立ち飲みの串揚げ屋「なんで・や」。串揚げは、うずら、タマネギ、シシトウ、椎茸などが一〇〇円、イカ、とり、海老、ロースなどが一五〇円。お約束の「ソース二度づけ禁止」の張り紙に、サービスの生キャベツもある。こういう大阪スタイルの串揚げ屋は、以前は北千住の「天七」くらいしかなかったと思うが、最近は赤羽の「串まん」、中野の「山ちゃん」など、あちこちで見かけるようになった。しかし、看板に「ホッピー」と大書されているところが東京風か。立ち飲みの串揚げ屋といえば、大阪では大衆酒場の一大ジャンルである。これを東京に持ってくれば、ホッピーと融合するのは理の当然というものだろう。ホッピーは三八〇円、中お代わりは二〇〇円。瓶ビールは五〇〇円、中生は四〇〇円、サワー類は三〇〇円から三八〇円。日替わりの黒板には、マグロ五〇〇円、岩ガキ四五〇円などもある。客は、Tシャツ姿の若者、ネクタイを外したサラリーマン、ドレスシャツ姿の地元民風など。駅のすぐ南にあり、京王線からもよく見える。(2007.6.28)