「なぎら健壱の東京居酒屋 夕べもここにいた!」
『サンデー毎日』の連載記事をまとめたもの。あまたの居酒屋本との違いといえば、正統派居酒屋や料理の美味い店だけでなく、フォーク酒場やらカントリー酒場やらが登場するところ。私自身は、この手の店に行きたいとは思わないのだが、著者の個性がよく現れていて、読ませてくれる。
しかし、なぎら健壱は実に幸せそうに酒を飲む。こんな常連客がいたら、周囲の人も幸せな気分になって、また行きたいと思うだろう。いい居酒屋というのは、かなりの部分、客が作るものであり、なぎら健壱は大衆酒場の「いい客」の、ひとつの典型なのだと思う。それも、現在の芸能人としてのなぎらと、かつての日雇労働者としてのなぎらが、重ね合わされてのことだろう。彼は自由人であり、越境者であり、異文化や異集団をつなぐ力をもっている。自分がこんな客になれるとは思わないが、こんな客と一緒に屈託なく楽しめる客ではありたいと思う。連載は続いている。今後にも期待したい。(2007.4.12)
- 作者: なぎら健壱
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (14件) を見る