橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

TBSレビュー出演

classingkenji2015-09-11

放送からだいぶ経ったので、そろそろ書いてもいいだろう。
「TBSレビュー」という番組に出演した。TBSの「検証番組」で、「TBSのみならず、放送全般が抱える問題について、幅広く取上げ、検証していく番組」とのこと。この回は「吉田類の酒場放浪記」がテーマのひとつだった。六月一六日、私の仕事場で収録し、七月五日に放送。番組に対する評価、コメントをということだったので、おおよそ次のような話をした。
居酒屋が好きな人のツボのようなものをよく押さえている。居酒屋はその雰囲気に浸ることが重要なので、動画メディアはその雰囲気を伝えるのに適している。吉田類さんの人柄もあり、そうした特徴をよく生かしていると思う。しかし、居酒屋というのは社会の縮図のようなものだから、もっとジャーナリズム的要素があっていいのではないか。大衆酒場ブームなどといわれているが、実際には経営難・後継者難が深刻で、居酒屋の数は最近六年間で三万軒以上も減っている。番組を見ると、吉田類さんの訪れる居酒屋はどれも常連客で繁盛していて、客も店主も和気あいあいだが、実際に行ってみると客が少なくて閑古鳥が鳴いているということも少なくない。物価高と不況、格差拡大と貧困など、居酒屋をめぐる社会環境は厳しい。そうした現実を伝えていく、ジャーナリズム的な視点というものが必要ではないか。
予想されたというか、最初から分かりきっていたことだが、後段の話はすべてカットされていた。TBSによると、この番組は「TBSのみならず、放送全般が抱える問題について、幅広く取上げ、検証していく番組です」とのこと。番組自体を、検証の対象としてみてはどうか。
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/tbs/2484/871385/