橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「鳥たけ」

classingkenji2007-04-14

五時半頃に仕事を終え、新宿で京王新線に乗り換えて下高井戸へ。向かったのは、「鳥たけ」。前回も書いたが、ここは旨い焼き鳥と刺身が両方味わえる、このあたりでは貴重な店。まずはビール、そしてレバ、首肉、つくねを注文する。付け出しは、鳥皮と厚揚げ、大根を煮物にしたもので、ほっとする味である。レバは血のような肉汁がにじむ新鮮なもので、臭みがなく、たいへん美味しい。つくねは野菜数種を練り込んだ、自然な味。首肉も、前回通りに旨い。食べ終えた頃に妻が合流し、刺身を注文する。イワシ、落ちトロ、サザエをいただいた。サザエは、焼き鳥を食べている最中に宅急便で運ばれてきたもの。房総の千倉産だといい、普通は見ないほど殻が大きい。これは、食べないわけにはいくまい。北陸と太平洋側とでは、サザエの味が違う。北陸のサザエは、荒波に流されないように角を長く延ばしていて、肉質は、刺身だとちょっと固すぎるかと思われるくらいに固い。太平洋側のサザエは、角が短く、肉質は比較的軟らかい。これは、刺身にちょうど良い。しかも、朝獲れたものをその場で剥いてもらって食べているのだから、旨くないはずはない。サザエは時価だったが、おそらく八〇〇円くらい。イワシ(四八〇円)は新鮮だったが、旬を過ぎたか脂が少なめである。落ちトロはごく普通のものだったが、鮪が高騰する中で五八〇円だから、良心的だ。ビールの次は、黒ホッピー(四三〇円)を注文。ここのホッピーは「三冷」だが、やや焼酎の量が少なく、薄めなのが少々残念だ。
比較的早い時間だったので、客は地元の中高年三人組と、一人客二人のみ。これから、繁昌するだろうという頃に勘定を頼んだ。下高井戸の駅から表通りに出て、明大前方向に少し戻り、カルディを過ぎたところを右に入れば、「ホッピー」「やきとり」と書かれた旗竿が見えるので、すぐ分かる。(2007.4.13)