橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

神澤柚実子『日本酒ソムリエが通う 東京のizakaya』(青春出版社・2003年・1380円)

若い(たぶん)女性の日本酒利き酒師が、新感覚で女性に喜ばれそうな居酒屋を中心に紹介している。「シンスケ」「きたやま」「串駒」といった、古典的名店も紹介されてはいるが、それは巻末近いモノクロのページでのこと。カラーのページで紹介されているのは、名酒の数々に創作料理を組み合わせた、おしゃれ系の店である。店内には花が飾ってあることが多く、内装も凝っている。器や箸置きにも工夫がある。私にはあまり似合わないが、世の中には大衆居酒屋には似合わない女性もいるだろう。そういう人を連れて行くには、参考になる。居酒屋考現学などと称してはいるが、ちょっと守備範囲外の店も増えているということである。私が行ったことのあるのは「笹吟」「おふろ」くらい。あと二−三店くらいは行ってみようか。

日本酒ソムリエが通う東京のizakaya(居酒屋)

日本酒ソムリエが通う東京のizakaya(居酒屋)