橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。記事の内容は原則として、執筆当時のもの。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「やきとんひなた」が営業再開

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 暗い話題が多い東京の居酒屋業界だが、営業再開の動きもでてきた。この日は、「やきとんひなた」が全13店中7店で営業を再開。このうち池袋東口店は14:00~20:00の営業とのことで、16:00過ぎに行ってみた。
 料理のメニューは減らしている。この店のメニューは、もつ焼きもつ煮込みをメインに、鮮魚とイタリアンを加味したところに特徴があるが、鮮魚とイタリアンは封印。だからもつを中心とした普通の居酒屋メニューとなっている。酒のメニューはほぼ変わらないが、限定日本酒のメニューはなかった。生ビールは、開けたてだろうから、たいへん美味しかった。もつ煮込みともつ焼きは、相変わらずの味。
 テーブルの数を減らし、入り口は開け放したまま。店頭にはテイクアウトの品がずらり。ただし、客は少ない。1時間ほどいたけれど、私を含めて5人だけ。5時半過ぎくらいには、客が増えただろうか。
 これから少しずつ、店を開けるところが増えてくるだろう。楽しみ半分、応援半分で、できるだけ行くようにしよう。(2020.5.19)

所沢の「百味」が閉店

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 あるいは今年は、戦後居酒屋文化の曲がり角となるかもしれない。あちこちから、老舗酒場が閉店したという知らせが舞い込んでくる。
 そして数日前、所沢の「百味」が閉店したという知らせが舞い込んできた。社長は以前から体調が悪く、後継者もいなかったとのことだが、コロナウイルス禍がとどめとなったようだ。キャンパスも閉鎖されているし、所沢にはもう2ヶ月も足を運んでいないから、様子を見に行くこともないうちに。無念だ。(2020.5.18)

2020年の立春朝搾り

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 原稿に追われていて、ずいぶん更新していなかった。新年のご挨拶もせずにいて、申し訳ありません。といいつつ、だいぶ前の話題である。
 六軒の酒販店と二軒のネットショップで買い集めた、今年の立春朝搾り。左から、千代の亀、鳴門鯛、司牡丹、梅錦、五橋、天覧山、開華、仙禽、賀茂泉、甲子、白馬錦、多満自慢。特に印象に残ったのは、安定感抜群の梅錦、目の覚めるような香りの五橋、先駆者らしい貫禄の開華。
 ワンパターンでアピール力のないラベル、元号を使う国際センスのなさは相変わらずだが、少し値段を上げたとはいえコストパフォーマンスが高いところもあいかわらず。ボージョレーヌーボーと違って、事前に瓶詰めしておくわけにもいかないから輸出は難しいかもしれないが、海外に空輸して三日遅れくらいで提供することはできないか。ラベルのデザインさえ変えれば、その価値のある酒だと思う。(2020.3.17)

要町「旬 さくら」

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 こちらは要町の駅のすぐそば。一本入った路地裏の和食居酒屋である。まずビールをいただくが、なぜか生ビールはカールスバーグ。たまにはいいだろう。日本酒が陸奥八仙、豊盃、七田など数種類あるのがいい。刺身の盛り合わせは、鮪、鰤、鯛、締め鯖など六種類。いいものを出しているようで、かなりサイズが大きく、その分薄めに切ってある。茄子の揚げ浸しは、彩りがよく、出汁が美味しい。寿司も出している。
 夫婦なのか、男性が調理を女性がフロアを担当している。地元の人に愛されている店なのか、六時も過ぎればかなり満員に近くなる。地元密着を絵に描いたような、いい店。私もいちおう地元だから、時々出かけよう。日本酒の種類がもう少し多ければうれしいのだが。(2019.10.2)

豊島区要町1-18-3
17:00~23:00 日祝休

小竹向原「やきとんだいだら 小竹向原店」

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 最近、いちばん頻繁に行っているのは池袋の「やきとんだいだら」。なぜなら、池袋駅と自宅のちょうど中間にあり、うまい日本酒をいつも数種類置いていて、しかも一合五八〇円と安いから。この「やきとんだいだら」の新しい店ができたというので、行ってみた。
 場所は、有楽町線小竹向原から歩いて二分ほどの住宅地の中の、緑道に面したところにある。カウンターと、テーブルが一〇卓ほどあっただろうか。日曜は一五時開店というので、一六時ほどに行ったが、まもなくほぼ満員になった。開店早々、地元客に受け入れられているようだ。メニューは池袋店とほぼ同じ。日本酒メニューはなかったが、聞いてみるといい酒が三種類ほどあった。ちゃんとメニューを作っておいてほしいものだ。
 近所の人には、朗報だろう。沿線の人も、途中下車して立ち寄る価値はあると思う。(2019.9.29)

板橋区小茂根1-27-3
17:00〜24:00 (土日祝日15:00~) 不定

池袋「SCHMATZ」

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 池袋にドイツビールを飲ませる店ができたと聞いて、行ってきた。西口と東口の両方にあるが、私が行ったのは西口の方で、ルミネ池袋の九階。都内に十数店舗あるチェーンらしい。
 テーブルに通されて、ビールのメニューを眺めてみる。ビールは七種類で、ヴァルドリング(エクスポート)、プリンツィンガー(ピルスナー)、ビットブルガー(ビルスナー)、フェルンベー(ペールエール)、ヘルツ(デュンケル)、ハッフェッンストッフ(ポーター)、そして時々変わるおすすめビール(この日はサッポロのエーデルピルスとのこと)。値段はグラスで六五〇円から八五〇円なのだが、一二〇分飲み放題が二五〇〇円だというから、これにするしかない。
 まずは、ビットブルガーから。飲みながらビールの説明書きを読むと、「新鮮なドイツビールを提供するため、ドイツビールの伝統製法をよく知る日本国内のブルワリーと提携」して作っているとのこと。ビットブルガー以外、知らないビールばかりで、しかも英国風までまじっているのは、そういうわけである。いったい、どこが醸造しているのだろうか(ビットブルガーだけは樽で輸入しているようだ)。
 ビールは、どれも美味しい。ビットブルガーは安定した旨さだが、とくにデュンケルが気に入った。ペールエールとポーターは、製法が英国風で、ドイツのホップを使っているのかも知れないが、確信はない。
 料理はTAPAS(なぜかスペイン風)と称する五〇〇円メニューがあって、こはだのロールモプス、三種のテリーヌ、ポークレバーパテ、ジャーマンポテトなど。一人なら、これを注文すればいいだろう。
 結局、七種類すべてを制覇して、ビットブルガーをおかわりしたところで時間が来た。ちょうどいい具合で、格安。また来ることにしよう。(2019.9.14)

豊島区西池袋1-11-1 ルミネ池袋店 9F
11:00~22:30 無休

十条「Beer++ 十条すいけんブルワリー」

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 前回も書いたが、いまクラフトビールの最先端は、住宅地近くの小さなブルーパブだ。この店は、JR十条駅の改札を出て三分ほどの店。一階が立ち飲みスペース、二階はテーブル席になっている。タップは七つで、カレー粉を使ったもの、赤胡椒を使ったもの、ワインの絞りかすを使ったものなど、ユニークなビールが多い。グラスはLとSがあり、Lは九〇〇円から一二〇〇円、Sは五〇〇円から七〇〇円といったところ。シトラホップを大量に使った「しとら」と、ワインの絞りかすを使ったポーターをいただいたが、いずれも上出来。
 常連さんが多いようで、スタッフがドイツで買ってきたというビールを分けてもらったり(私もいただいた)、料理を分け合ったりと、和気あいあい。こんな店が増えれば、大手ばかりがはびこる日本のビール文化は変わるはずだ。(2019.8.29)

北区上十条2-7-13
17:00~23:00
15:00~22:00(土・祝) 日月休

大塚「スモーク ビア ファクトリー NAMACHAん Brewing」

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 いまクラフトビールの最新トレンドは、住宅地の中のブルー・パブだろう。次々に新しい店ができ、いいビールを提供している。都心のブルーパブは、家賃が高いから、二五〇ミリリットルで八〇〇円などという値付けをせざるを得ないが、住宅地なら価格を安く設定できる。ビールは鮮度が重要だから、住民にとっては自宅の近くにあることのメリットは大きい。
 この店も、その一つ。山手線の大塚駅から徒歩三分、かつての花街の入り口あたりにある。店長兼醸造長の米澤美里さんが、アルバイトをしていたビアパブ「スモーク・ビアファクトリー」のオーナーに提案して店を開いたのは二〇一七年のこと。変わった店名は、学生時代に生ビールばかりおかわりしていた米澤さんのあだ名が「ナマちゃん」だったからとか。
 タップが十六個あり、うち店内で醸造されたものは二種類。燻製料理が売り物の店なので、ここでは自慢のラオホビールをいただきたい。すっきりした味のラオホで、魚介の燻製にはぴったりである。よそから仕入れる他のビールも、国内外からいいものを揃えている。(2019.8.25)

豊島区南大塚1-60-19
17:00~25:00(日17:00~23:00) 月休

目白「天作」

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 この日は、目白の天ぷら屋さんでコースをいただくことに。目白駅から西へ少し歩き、左側に入った住宅地の入り口のような場所で、住所は新宿区下落合になる。
 コースは四〇〇〇円から七〇〇〇円までの4種類。今回は五〇〇〇円の月コースを注文。まずはサラダ、先付け(この日はひんやりした心太)のあと、最初に出てきたのは活け海老が二本。キス、舞茸、鮎、おくらとヤングコーン、ホタテの変わり揚げ、蒟蒻(田楽風の味噌をのせて)、ナス、穴子と続き、最後はご飯。ご飯はかき揚げご飯、天茶など何種類か選べるが、私は天ちらしをいただいた。いずれも色よくからりと揚がり、おいしい。日本酒は臥龍梅、豊盃などいいものが数種類ある。
 客は、目白の高級住宅地の住人らしいご夫婦や家族連れなど。リーズナブルに美味しい天ぷらをいただくことのできる、使い勝手のいい店だと思う。天ぷらは季節ものが多いから、春夏秋冬一度ずつくらいいってみようという気になった。ランチもやっている。(2019.7.13)

新宿区下落合3-2-16
11:30~13:30、17:00~21:30
17:30~21:30(土曜) 日休

池袋「日本酒原価酒蔵 池袋店」

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 前から気になっていたこの店、ふと思い立って訪れてみた。
 たしかに日本酒の種類は多く、安い。注文すると100ミリリットルの小瓶に詰め替えたものを持ってくるのだが、その値段が、「醸し人九平次純米大吟醸」三三三円、「澤屋まつもと・純米吟醸」二九八円、「陸奥八仙・純米大吟醸」三一六円、南部美人純米吟醸」三〇四円、といった具合。移し替えて密閉しているから、品質はまったく問題ない。常時ほぼ満席なのも、納得がいく。問題は、料理。刺身の盛り合わせ(九九九円)を注文したが、薄っぺらく、少々干からびたものが三種類二枚ずつと、イクラおろしがほんの少し。美味しくない。酒はたしかに原価かも知れないが、料理で利益を稼ぐというビジネス。両者のバランスが、あまりにも悪い。
 酒も料理も適正価格で、という店のほうが、いいに決まっている。しかし店名に「原価」と謳うことで客は集まるのだろう。食事はほかの店で軽く済ませ、失敗のない酒のあてだけ注文して、酒を次々におかわりする、という使い方なら、いい店かもしれない。(2019.7.5)

豊島区南池袋1-19-4 B1F
月〜金15:00~23:30 土・日・祝14:00〜23:30 無休