橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

三軒茶屋「えびすさん」

classingkenji2009-04-22

三軒茶屋エコー仲店店祖師ヶ谷大蔵店と、系列店についてはすでに紹介しているが、この店はもともとの発祥の地であるらしい。場所は、三軒茶屋の駅から玉川通りの右側を渋谷方向に進み、昭和女子大学の手前の信号のところで右に曲がって、四分ほど歩いたところ。二階建てだが、屋台風の作りで、外には透明なビニールシートが垂れ下がっている。
行ったのは土曜日の夕方、開店直後だが、すでに母子連れが来ていて、親はビールを飲み、子どもはもつ焼きをほおばっている。すぐあとからも、親子三人連れ、男性の一人客が二人など、続々と客が詰めかけ、五時前というのに満員に近くなる。地域の人々に親しまれている店だということが、よく分かる。しかし、みんな身なりはきちんとしている。カジュアルだが、それなりに金のかかっていそうなもの、趣味の良い色のものを着ている。大衆的なもつ焼き屋とはいえ、そもそも下町とは値段が違うのだが、それでも魚料理その他の居酒屋料理を出すような、その地域の普通の居酒屋より相対的に安ければ、もつ焼き屋は繁盛するということだ。素材がよく、下処理がきちんとされていれば、もつ焼きや煮込みというのは完成された美味い料理であり、子どもにも受け入れられる。これまでもつ焼き屋の少なかった山の手地域には、もつ焼き屋が広がる素地があるとみるべきだろう。(2009.4.11)

世田谷区太子堂1−15−12
16:00〜1:00 年末年始休