池内紀『今夜もひとり居酒屋』
ドイツ文学者にして街歩きの達人・池内紀センセイの新著。『中央公論』に連載されていったエッセイの単行本化だが、連載時のタイトルは「居酒屋の哲学」だったらしい。哲学らしいところはたしかにあって、そのメインは居酒屋、または居酒屋の個々のアイテム、客、主、店員などをカテゴリー化していくことだろう。そのほとんどは三分類だが、弁証法とは関係なさそうだ。
たとえば、品書きにはA黒板タイプ、B表札タイプ、Cビラタイプ、がある。お通しには、A安直型、B流用型、C入念型がある。そして居酒屋の特性には、A素材性、B郷土性、C工夫性がある、など。けっこう腑に落ちる分類が多い。客や主の観察もなかなか鋭い。さすが文学者というべきか、人間観察の達人でもあるようだ。店名などは出てこないから、ガイドブックとしての機能はほぼ皆無。読んで楽しむ本である。
- 作者: 池内紀
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/06/24
- メディア: 新書
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