橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

石原たきび編『ますます酔って記憶をなくします』

以前紹介した『酔って記憶をなくします』の続編。mixiのコミュでの投稿から傑作を集めたものだから、第二集となるとややインパクトが弱くなるのは、仕方のないところだろう。とはいえ、今回も抱腹絶倒のエピソードが満載。朝になってバッグを開けたら、生きた沢蟹がわさわさ出てきたり(前日、居酒屋で生きたまま持って帰ると注文したとか)、ガーンガーンと音がするので目をさましたら、友人が「どうしても向こう側へ行けないんだよ」といいながら、鏡に何度もぶつかっていた、友人の結婚式で、パンツ一枚でキャンドルを口にくわえ、テーブルの上ではしゃいでいるところをしっかりビデオに撮られてしまった、など。泥酔すると007になってしまう夫の話も、おもしろい。
前作と同様に、女性の投稿が多い。あとがき代わりの恩田陸茂木健一郎の対談で、茂木は女性の方が自由に生きているのかもしれない、と言っている。付け加えれば、男性の場合には体面やら仕事・組織との関係やらで、笑い話にならないケースが多いからだろう。前作が面白いと思った人にはお勧め。一冊だけ読むなら、前作の方がいい。

ますます酔って記憶をなくします (新潮文庫)

ますます酔って記憶をなくします (新潮文庫)