橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「さばの湯」の鯖缶

classingkenji2011-06-01

帰り道に「さばの湯」に立ち寄ったら、店の真ん中に金色に輝く缶詰の山。店主の須田さんに聞くと、震災で全壊した木の屋石巻水産から、瓦礫と泥に埋もれた缶詰を買い取り、常連客たちが集まって洗ってきれいにして、売り出しているのだとのこと。缶詰は、五〇〇個。ラベルがはがれているので、缶に印刷された記号から中身を判断して、マジックで書いてある。大部分は金華鯖の水煮缶だが、穴子、カレイの縁側、玉こんにゃくなど、珍しいものもある。各種取りそろえて、一〇個ばかり買ってきた。
須田さんは三月八日を「サバの日」と定め、この日からイベントを繰り広げる予定だったが、始まった直後の震災以来、石巻への支援活動を繰り広げてきた。車で物資を送り、帰りに引き取った缶詰を持ち帰る、というサイクルである。先日聞いたら、もう缶詰は四〇〇〇個売れたとのこと。こんな支援活動もあるのである。(2011.4.29)

世田谷区経堂2-6-6
18:00〜深夜 月休