石原たきび「酔って記憶をなくします」
深酒すると、ときどき記憶をなくす。後から考えて、仕事の話をしたような気もするが、どんな話だったか。何を頼まれたのか。いろいろ暴言を口にしたような気もするが、何を言ったのか。たいがいの場合は、たわいのない話しかしていないのだが、二日酔の気弱さもあって、けっこう気になるものである。
本書は、mixiのコミュに寄せられた抱腹絶倒のエピソードを集めたもの。埼玉に帰るはずが、気がついたら日本海が見えた。交番のお巡りさんにプロポーズしてしまった。夜中に起きて、全裸で物干し竿にぶら下がった。ファウンデーションのスポンジをクッキーと間違えて食べた。服を着たまま湯船につかっていた。居酒屋のトイレで三点倒立していた。目覚めたら、国会議事堂の前で寝て、一〇人以上の警察官に取り囲まれていた、など。世の中には、私にはとても敵わない猛者がたくさんいると知って、親近感を覚えるとともに、ちょっと安心したりする。酔って記憶をなくすことのある人は、必読。
- 作者: 石原たきび
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/09/29
- メディア: 文庫
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