橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大分「みどり」

classingkenji2011-03-03

夜も更けてきた。最後に行くのは、都町屋台街と決めていた。一〇年ほど前、地元の人に連れられて飲み歩き、最後にたどり着いたのがここである。二〇メートルほどの路地の両側に、小さな店が六軒ずつあり、白地に太い墨文字で統一された看板が並んでいる。居酒屋好きなら一目で気に入りそうな一角だ。入ったのは、左側のいちばん奥にある「みどり」である。
L字型カウンターに、何とか六人座れるだろうか。こんな小さな店なのに、煮物や焼魚、亀の手やわたり蟹など、たくさんの料理が並び、日本酒や焼酎はもちろん、スコッチウイスキーまで何種類かおいている。店を切り盛りする女将は、客の注文に次々に応じながらも、おっとりと余裕を失わず、それが店にくつろいだ雰囲気をつくり出している。こんな女将のいる店こそ、最後に行き着く居酒屋にふさわしい。

大分市都町3-5-9
18:00〜27:00 日祝休