橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

戸越銀座「焼鳥エビス」

classingkenji2011-05-13

仕事の帰り、ふと思い立って、池上線に乗ってみた。
いまから二五年前、洗足池の看護学校社会学の非常勤講師をやっていたことがある。教壇に立ったのは、これが生まれて初めてだった。学生は全員が女性で、授業の前後に起立・礼をするのに驚いた。いま大学でやっているのより難しい授業だったはずで、学生には迷惑だっただろう。その頃は、帰りに飲んで帰るなどという習慣がなかったから、夜この辺を歩いたことはない。
戸越銀座で降りてみた。一直線の長い長い商店街で知られる町だ。関東大震災のあと、銀座の煉瓦の瓦礫を運んで低地を埋め立て、ここに作られた商店街に「銀座」の名が付けられた。今では至るところにある「○○銀座」の、さきがけだといわれている。目当ては居酒屋なのだが、意外に少ない。この店はテイクアウトの焼鳥屋で、小さなテーブルをいくつかとカウンター席を横に設けたという趣の店。ひっきりなしに、焼鳥を求める客がやってくる。こちらはこちらで、焼鳥を食べながらビール、そして日本酒をいただく。テイクアウトが主だから、営業は七時まで。昼間に来れば、きっと地元のお年寄りが集まっているだろう。(2011.4.13)

品川区戸越2-5-3
14:00〜19:00 月木休