橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ロンドン「ザ・ベア・アンド・スタッフ」

classingkenji2008-07-02

英国にはイングリッシュ・ソーセージというものがある。朝食によく出てくる腸詰めのソーセージなのだが、概して美味しくない。つなぎにパン粉か小麦粉でも入っているのか、もっさりした食感で、かんでも肉汁はほとんど出てこないが、塩味だけはかなりきつい。日本の添加物だらけのソーセージとは違って自然な味だが、かといって美味いわけではない。しかし、このパブのソーセージはうまかった。場所は地下鉄のレスター・スクエア駅のすぐ近くで、ナショナル・ギャラリーの裏手の人通りの多い場所。ソーセージは数種類あり、この日食べたのは、ラムとミントのソーセージと、スコットランド産の鹿とジュニパー・ベリーのソーセージ。いずれも燻製した普通のソーセージではなく、塩漬け肉を粗挽きのミンチにして他の材料と混ぜ、羊腸に詰めて焼いたものだろう。素材の味がはっきりしていて、上質の肉料理という感じ。店内の張り紙に"The Finest British Sausages"とあるのも、そうかもしれないと思わせる。しかも、15センチほどのかなり大きいものが3本で6.95ポンド(1450円)と、ロンドンにしては安い。付け合わせの量が適度で、1皿を1人で食べてちょうどいいくらい。ビールもOld Speckled Henのような定番のほか、Landlord、Willywrightなど聞き慣れないものを含めて10種類ほどある。2人でビールを3パイント飲み、2皿食べて満腹になって、勘定はチップ込みで24ポンド(5050円)。ビール好きでソーセージ好きなら、行く価値がある。(2008.6.20)

The Bear and Staff
11, Bear Street, London, WC2H 7AS