橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ロンドン「イーグル」

classingkenji2008-07-05

何度も書くように、英国の料理はまずいというのが定評で、それはパブでも例外ではない。美味しい料理を出す店もあるのだが、ごくありふれたフィッシュ・アンド・チップス、魚をエビに代えただけのプロウン・アンド・チップス、ミートパイ、スモークサーモンのサラダといった、たいして美味しくもないが量だけは多いという料理ばかり出す店も多い。しかし、近年になって「ガストロ・パブ」と呼ばれる料理に凝ったパブが増えてきているようで、この店はその草分けといわれる店。ファーリンドン・ロードという、ちょっとへんぴなところにあり、ファーリンドン駅から歩いて10分くらい。歴史の長い老舗パブのような外観。2つあるドアにはそれぞれBAR、SALOONと書かれていて、かつては2つのコーナーに分かれていたのだろう。現在の店内は、広いワンフロアになっている。長いカウンターの向こうで料理人が腕をふるい、その上の黒板には本日のメニューが列挙されている。この日食べたのは、まずスモークサーモン。サワークリームを添え、香草入りのドレッシングがかけられたもので、なかなか品がいい。次は、アスパラガスをたくさん入れたスペイン風オムレツ。スペイン料理店のメニューとしては普通の味だが、これをパブで注文できるところに価値がある。最後は、ラムのロースト。ビーツのたくさん入ったサラダに載ったラムのバラ肉は、こんがり焼けて美味。ビーツとの相性もいい。酒は、エールを中心にビールが10種類ほど、ワインもフランス、イタリア、スペインなど10種類ほど、各種のカクテル、スピリッツがある。キリンの一番絞りがあって、若者たちがけっこう注文して、「一番絞り」と行書体の文字が入ったパイントグラスで飲んでいるのには驚いた。場所が場所だけに、パブめぐりをしたい人向け。(2008.6.21)

The Eagle
159 Farringdon Road
London EC1R 3AL