橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

有楽町「千成」

classingkenji2007-09-06

有楽町のインターナショナルアーケードときいて、分かる人はどれだけいるだろう。ガード下の「登運とん」の近くから狭い通路を線路の真下に入り、新橋方面に向かうガード下である。なぜ「インターナショナル」なのか。確かに新橋側の端っこには、外人向けのキッチュな日本土産を扱った店があるが、名前にふさわしいのはここだけ。あとはJR関連企業と思われるオフィスと駐車場、そして居酒屋が並んでいる。大都会の中の不思議な異空間で、その雰囲気は写真からも分かっていただけるだろう。その一軒が、この「千成」。大衆酒場に立ち飲み屋を制覇したOLたちも、さすがにここまでは入り込まないらしく、客はほぼ一〇〇%がサラリーマンである。クールビズとスーツにネクタイ姿が七:三くらいだろうか。ここの名物はダチョウ料理らしいのだが、今日は焼きとんをいただく。少々焼きすぎで、あまり美味しくはない。値段は、このあたりとしてはまあまあ安い。異界の雰囲気を味わいたい人はどうぞ。(2007.8.31)