橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

吉田類『酒場のオキテ』(青春出版社・2007年・552円)

忙しくて、飲みに行けない。それで今日も、酒の本です。
酒場詩人として知られる吉田類さんの新著。タイトルにはあまり意味がない。前半は、浅草、下町、都心、新宿・中央線と都内各所の酒場街を概観していく。歴史や人情を織り込みながらの語り口はさすがだ。情報量も、多い。お手本としたいところである。後半は、地方新聞社十二社の合同企画による全国酒場めぐり。うらやましい企画だが、こちらはやや、観光ガイド風。自分のよく知っている地域に関しては、店の選択などやや疑問な部分もある。最後には立ち飲みに関する二十ページほどの小編。立ち飲みの現代史も織り込みながら、角打ちからスタンドバーまで幅広い。前半部分だけでも十分買う価値がある。居酒屋好きなら、手元に置いておきたい。

酒場のオキテ―「酒通」の「粋」がわかる本 (青春文庫)

酒場のオキテ―「酒通」の「粋」がわかる本 (青春文庫)