橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「はかりめ」

classingkenji2007-04-17

三原通りと三原小路に面した銀座五丁目のビルの六階にある、穴子料理の店。店名の「はかりめ」とは、表面に等間隔の白い斑点のある穴子の姿を、棒秤に見立てた呼び名とのこと。店長の近藤さんは、妻の旧知の人物で、ソムリエの資格を持つ。料理はほぼ純和風で、主要な飲み物は四〇種類ほどの日本酒と一〇数種の焼酎だが、シャンパン、白、赤を各一種ずつ置き、さらに頼めばメニューにないワインも出してくれる。今日は、知人のフランス人と一緒なので、ワインにする。
料理は、まず「のれそれ(穴子の稚魚)」、刺身の盛り合わせ。この店では、穴子を刺身や霜降りで供する。しっかりした歯ごたえがあり、脂も乗る。たとえていえば、全身、鮃の縁側というような白身で、たいへん美味しい。白焼きとタレ焼きははずせない。今日食べた珍品は、フォアグラの西京漬け(九八〇円)。味はまさしくフォアグラだが、味噌の味が口中に漂い、脂臭さを消してくれる。締めは、黒米を使った穴子寿司。
安い店ではないが、穴子の造り各種(一〇五〇円)と小鉢の酒肴(六〇〇円のものが多い)で飲むなら、さほど高くはならない。店内は、右側に一二席ほどのカウンターがある他は、仕切られた個室のような造りになっていて、少人数の会食に向く。平日は、やや裕福そうなカップルと社用族が中心。一人で行くなら、カウンターを予約するといい。(2007.4.14)