橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「ささもと」

classingkenji2011-05-18

次に向かったのは、この店。串に刺して煮込むという、明治期に生まれたモツ煮込みの原型を出す、数少ない店のひとつである。銀座に支店があって、こちらは場所柄、高級牛の串焼きや刺身なども出す高級店。これに対して思い出横丁の本店は、思い出横丁としては普通の値段の店である。いつも混んでいて、しかも常連の男たちの何ともいえない雰囲気から、最初はなかなか入りにくい。しかし入ってしまえば、どうということはない。
奥の方のテーブルや窓は、相当年季が入っている。おそらく、開店当時から変わっていないのではないか。木の角は、こすれて丸みを帯び、飴色に艶を帯びている。メニューの中心はもちろん串に刺した煮込みで、ただ「煮込み」といえば、五本を盛り合わせてくれる。味は、見かけよりあっさりしていて、三皿くらいは食べられそうだ。(2011.4.13)

新宿区西新宿1-2-7
無休