橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ラズウェル細木『大江戸 酒道楽』

酒のほそ道』で知られる作者だが、この作品は江戸が舞台。
酒の行商を営む大七が主人公で、江戸の酒風俗と食文化が、事細かに描き込まれている。山くじら鍋や紅葉鍋、雛祭りにいただく蛤のお吸い物、飛鳥山の花見、屋台の天ぷら、腹身を使ったねぎま鍋など。なかなか情報量が多く、楽しめる。巻末には『二代目服部半蔵』という短編も収められており、こちらは戦国時代のお話。
酒と食に関する歴史書は数多いが、これをマンガに結びつけるという着眼がいい。これで六八〇円は安い。

大江戸酒道楽 (SPコミックス)

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