橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ウィーン「バイスル」

classingkenji2010-09-20

途中、音楽祭を二日ほどお休みしてウィーンへ。どこかで地元の料理でも食べようかと入ったのが、この店。シュテファン大聖堂の近くで、地元客が大部分。ここで、ビールを飲みながらグーラッシュとターフェルシュピッツをいただく。
オーストリアのビールは、ドイツほどボディがなく、しかもピルスナーほどホップが強くない。日本の麦芽100%ビール、たとえばエビスビールにかなり近いといっていいだろう。グーラッシュはハンガリーが本場だが、オーストリアでもよく見かける料理で、パプリカを大量に使ったシチューで、肉は牛肉を使うことが多い。ターフェルシュピッツは、牛肉を野菜といっしょに煮込んだ料理で、リンゴ、ホースラディッシュベシャメルソースなどを使った数種類のソースといっしょにいただくもの。店によってスタイルが違い、肉をスープから引き上げてスライスし、平皿に盛ってくる場合もあれば、スープといっしょにシチュー皿に盛ってくる場合もある。この店は後者のスタイルで、濃厚なスープが実に美味しい。
たいていの客がこの二つの料理を注文している。隣に座った60代男性2人組が、それぞれターフェルシュピッツを注文し、ナイフとフォークで食べながらビールを飲む。日本でいえば、地元の年金生活者が二人でおでん屋に入ったようなものか。値段も安いので、おすすめである。

Dorotheergasse 2-4
1010 Vienna