橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

青森「八甲田」

classingkenji2010-05-24

連休の初めは、青森へ。ちなみに私は、今回の青森訪問で、全四七都道府県を踏破したことになる。
青森に着いたあと、まずホテルに荷物を置き、JR駅附近へ。少々空き時間があったので、早くから開いている店だと聞いていた「八甲田」へ。古川市場の近くにある古い木造の店で、手前にカウンター、左手にテーブルと座敷がある。やや雑然としていて、観光客向けとはほど遠い店だということがわかる。すでに集まって飲んでいるのは、地元の高齢者たち。メニューは串カツ、もつ焼き、もつ煮込みなどの居酒屋料理と、地元の魚介類の二本立てで、いかにも大衆酒場というラインナップだ。
写真はホタテの刺身だが、これには感心した。真に鮮度がいいというのは、このことだ。生きている殻付きの貝なら、東京でも手に入るが、生きの良さが違う。貝柱だけでなくヒモの部分もついていて、これがシャキシャキと実に美味しい。タラの味噌漬焼き、キュウリ魚の塩焼きもいただいたが、いずれも文句なし。日本酒も、地元の酒が数種類。「田酒」が一合六〇〇円というのは、地元ならではだろう。
店の人に聞くと、最初にできたのは一九七〇年ごろで、ここに移ってきたのが三〇年ほど前とのこと。昔は役所関係の客が多かったが、いまは少なくなって、年金生活の人が中心だそうだ。時間があれば、もっとゆっくりしたい店だった。(2010.4.28)

青森市古川1丁目13-16