橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「銀座ライオン 銀座七丁目店」の稚鮎

classingkenji2010-04-12

このブログは、基本的に時系列で書いている。記録を確認したり、必要な場合には資料にあたったりしてから順番に書いていくので、記事は常に二〜三週間遅れになっている。しかし、これでは特別なイベントや季節メニューには間に合わない。今日は順序を変え、二日前のことを書くことにする。
ちょっとした用事があって大手町に出かけ、そのあと銀座に寄った。当然ながら、一軒目はこの店である。ある時期からビールが高くなり、大ジョッキは千円を超えるようになった。そのあとになって、不況とデフレがやってきたわけだが、かといって若者向けのチェーン店とは違うから、ビールを値下げするわけにいかないのは理解できる。しかし、客をひきつけるための努力は必要だ。この店の場合、料理メニューに工夫を凝らし、値段も抑えるようにし始めたようだ。
春の特別メニューが数種類ある。写真は、「稚鮎と明日葉のおつまみ揚げ」で六八〇円。以前のこの店なら、八八〇円でもおかしくない。稚鮎と明日葉の苦みが、ビール、とくにエーデルピルスにぴったりだ。稚鮎の季節は短いから、食べてみたい人はお早めに。
さて、壁の貼り紙に「創建76周年」と書かれている。このビアホールのある建物は、もともと当時の大日本麦酒株式会社本社ビルとして作られたもので、設計者はフランク・ロイド・ライト風の建築で知られる菅原栄蔵。完成は一九三四年である。
完成当時のビアホールの様子はどのようなものだったのか、知りたいと思いませんか。実は、これを知ることのできる映像、それも鮮明なトーキー映画があるのだ。次回は、これを紹介しよう。(2010.4.10)

中央区銀座7-9-20
11:30〜23:00(日祝〜22:30) 無休