橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

西川治『世界ぐるっとほろ酔い紀行』

著者はグルメで知られる写真家で、料理に関する著作が多いが、本書は世界中で酒を飲み歩いた記録をまとめたもの。酒については、私もかなりの数の本を読んできたし、実際に飲んでもきたので、既知のことも多いのだが、やはり実際に世界中へ足を運んだ人は違う。役に立ちそうな、あるいは初めて知ったことをいくつか書き留めておこう。
釜山で食べたという穴子コチュジャン炒めは旨そうだ。つまみながら眞露を飲んだとのことだが、相性も良さそう。
ブラッドベリに「たんぽぽのお酒」という小説があるが、実際に作る話が出て来る。どうやって発酵させるのかと思ったら、砂糖を加えるらしい。「ぼくは、飲みたいときにいつでも、夏を飲むことができるようになった」という一文が決まっている。
ポルトガルの海岸では、イワシの塩焼きを食べさせている。客はこれを食べながら、ポルトガルの濃い赤ワインを飲んでいる。試してみると、よく合うのだという。今度、やってみよう。
アメリカのレストランで出合った料理にも興味をひかれる。「コーヒー・ソーサーほどの大きさのピッツァの生地の真ん中にニンニクが埋まっている」「ほくほくとしたニンニクとピッツァの生地に埋め込まれているゴルゴンゾーラと玉葱のハーモニーがなんともうまい」。一度、試してみたいものである。

世界ぐるっとほろ酔い紀行 (新潮文庫)

世界ぐるっとほろ酔い紀行 (新潮文庫)