松山「たにた」
次に訪ねたのは、夏目漱石と縁のあるこの店。漱石は『坊っちゃん』にもある通り松山で二度住まいを変えたが、最後に落ち着いたのが、士族の家の離れ屋敷である「愚陀仏庵」。「たにた」は、この屋敷の庭だった場所に建っているのだ。
いちばんの自慢はオコゼの薄造りで、頭と肝を中心に、花びらのように並べられた白身は、形と厚みが見事に揃って美しい。合う酒を尋ねたところ、「大吟醸・吹毛剣」をすすめられた。
実は知る人ぞ知る名店で、佐々木久子(ご主人のお母さんの親友だったとか)や杉浦日向子にも愛されたというのに、ご主人はあくまで謙虚で「ただ古いだけの店なんですよ」とおっしゃる。余裕のない急ぎの旅なら、まずはここへ来るのが良さそう。(2010.1.18)
松山市二番町3-7-4 17:00〜23:00(ランチあり) 無休