橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「豊田屋 三号店」

classingkenji2009-12-03

そろそろ暗くなってきた。二軒目をさがそう。もつ焼が食べたい。老舗の豊田屋へ行ってみることにしよう。この夏には一号店へ行ったが、今日は三号店だ。
もつ焼きは、たん、はつ、かしら、しろ、レバー、なんこつとあり、二本二五二円。五本盛り合わせなら六三〇円。ビールは大瓶五五六円、中生四二〇円、大生七八八円。サワー類は三六八円。ホッピーは四〇〇円で、外一五〇円、中二五〇円。外の方がかなり安いという、不思議な価格設定だが、みんなが中を追加してくれれば、店が儲かるということだろう。
カウンターの内側に焼き手が二人いるが、二人とも中国人らしく、中国語で雑談をしている。出てきたもつ焼きは、明らかに焼きすぎで焦げ臭く、硬い。中国人の焼き手たちは、おそらく美味いもつ焼きの味を知るまい。ふと、おかしな音が聞こえてきた。パチン、パチン。焼き手が、もつを焼きながら爪を切っている。パチン、パチン……。
虚しい池袋の夜であった。(2009.11.9)

豊島区西池袋1丁目34-5
16:00〜23:30 日休