橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ボージョレー・ヌーボー

classingkenji2008-11-28

新酒の季節である。ボージョレー・ヌーボーは、概して美味いものではない。とくに、某大手酒問屋兼メーカーが「ボージョレーの帝王」などと称して大量販売するヌーボーなど、まずくて飲めたものではない。しかも、高い。フランスだと、せいぜい一本五〇〇円程度ではないかと思うが、日本では三〇〇〇円前後。今年はユーロ安で例年より安めだが、それでも高い。一時のようなブームは収まったようだが、それでもどの酒屋も店先に並べている。
とくに熱心なのは、コンビニエンスストアだ。とはいっても、熱心なのはフランチャイズの店主ではなく、元締めの会社のほう。売れる見込みのないヌーボーを大量に押しつけられて、大きな損失を出している店が多いはずだ。だから、こんなものが売られたりする。「ボージョレー 2007 2006 50%OFF」。熟成に向かないヌーボーを2年も保管したら、どんな味になるのか。いや保管といっても、コンビニの店頭か裏の倉庫に放置されたものである。80%オフなら、買って試飲してみてもいいのだが。
ちなみに、「ナチュラル・ローソン」で売られているドメーヌ・デュ・ペール・ギュヨのボージョレー・ヴィラージュ・ヌーボーを、「樹齢100年を超える古木を使用」(あくまでも「使用」で、全量ではない)というキャッチにひかれてハーフボトルで買ってみたが、これはけっこう美味しかった。あの2003年を思い出させる味である。(2008.11.22)