橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「てしごとや」

classingkenji2008-11-27

今日は出版社との打ち合わせで、池袋へ。池袋の西口から、右へ。西口交番の前を通り過ぎたところで、前方に何本かの飲食店街が見えてくるが、その真正面の通りには、「萬屋松風」「酒菜屋」「富士水産」など、日本酒と魚の美味しい居酒屋が何軒か集まっている。その中の一軒が、ここ。実は、中に入るのは今回が初めて。狭い木戸を、腰をかがめてくぐり抜けるという入りにくさで、どうもひとりでは入る気がしなかった。今日は、編集者二人を道連れというわけである。入り口だけをみていると木造の一軒家のように見えるが、実際にはビルの一階と二階。
靴を脱いで中に入る。ベンチ席と掘りごたつ式の席とがあるとのこと。われわれは、二階のベンチ席へ。民芸風の造りで、この点は「萬屋松風」に似ている。料理や酒の揃え方も、似ている。日本酒は二〇種類ほどあり、〇・五合から注文できるのがうれしい。値段は、一合が七〇〇円から一六〇〇円程度。料理は魚介類が中心で、刺身が一五種類ほどあり、七−八〇〇円台。珍しい銀鱈の刺身というのがあったので、注文してみると、脂ののった身を薄切りにして品良く皿に並べたものが出てきた。なかなかうまいものである。備長炭で焼くという焼魚も、種類が多い。鍋は、あんこう鍋(二五〇〇円)、きりたんぽ鍋(二二〇〇円)など。店内を全部見たわけではないが、明らかにグループ向けで、ひとりでふらりと入る感じではない。値段は、この種の店としては安くも高くもない感じ。気の張る人や女性のいるグループ客には、ちょうどいい店だろう。(2008.11.21)

豊島区西池袋1-33-3
17:00〜23:30 無休