こゆるぎ次郎「GUINESS アイルランドが産んだ黒いビール」
日本人は、ピルスナー好きである。あの明るく透き通った黄金色のビールで、味は切れがよく軽快。黒ラベル、ヱビス、キリンラガー、一番絞り、モルツなどは、すべてピルスナータイプのビールである。(ちなみに、スーパードライは広い意味ではピルスナーの一種かもしれないが、ホップの苦みと香りが希薄なので、いちおう別のビールと考えたい気もする。)
大別するとビールには、下面発酵で醸造したあと低温で熟成させるラガーと、上面発酵で醸造されるエールの二種類がある。ピルスナーはラガーの一種だが、日本のビールの大部分がピルスナーなので、事実上はラガー=ピルスナーになってしまっている。エールに至っては、地ビールメーカーが細々と作っているだけで、あまり流通していない。かつては、サッポロやアサヒからエールか発売されたことがあるが、続かなかった。海外ではエールが多く作られているが、やはり日本では定番商品になるほど売れたケースはない。
ただし、ひとつだけ例外がある。それが、ギネスである。なぜ売れたのか。恐ろしくスムーズで飲みやすく、エールらしい香味を控えめにしているからか。あるいは、卓越したマーケティング戦略によるものか。エール好きからみると、邪道と思えないではないところもあるが、いいビールであることは誰にも否定できない。
本書は、ビールの種類や醸造法、ビールの歴史、アイルランドの歴史と風土などを含めた広い視野から、ギネスのなりたちと魅力を語り尽くした本である。なぜ、缶入りなのにあんなに細かい泡ができるのか、泡が下方に向かって流れるのはなぜかなど、ギネス好きなら誰でも疑問に思うことにも、解答が与えられている。しかも、視野の広さもあって、ビールそのものについてもいろんな知識を得ることができる。さすがは、ビール醸造にも造詣が深く、パパジアンの自家醸造ガイドを翻訳した著者である。ビール好きは、必読。
GUINNESS アイルランドが産んだ黒いビール (Shotor Library)
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自分でビールを造る本―The Bible of Homebrewing
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