橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

曳舟「岩金酒場」

classingkenji2008-11-12

京成曳舟からキラキラ橘商店街と反対方向に出て踏切を渡ると、曳舟川通りがある。ここで道の向こう側を右に曲がり、少し歩くと見えてくるのが、この「岩金酒場」。黒地に雄渾な筆致で書かれた「大衆 岩金 酒場」の文字が素晴らしい。暖簾も、いい。店内は、意外に明るく気さくな雰囲気。L字型のカウンターとテーブルがあり、常連たちで賑わっている。奥のテーブルで静かに飲んでいるのは、この店のご隠居さんらしい。カウンターの内側には、三人の女性が立つ。楽しみながら客の相手をしているのがよくわかる。
ポテトサラダ、にら玉、餃子、おでんなど、ごくありふれた居酒屋料理が、安くておいしい。飲み物は、やはりハイボール(三〇〇円)。シロップ入り焼酎と炭酸の瓶が別々に出され、自分でブレンドする。ごく普通のハイボールで、柑橘系の香味と、わずかなケミカル系の香り。常連客は氷を入れる入れないと注文するが、何もいわないと氷なしで供されるようである。
ハイボール二杯、ポテトサラダ(三五〇円)、おでん三個で、しめて一一九〇円。ごちそうさまといって席を立つと、「いつもありがとうございます」といわれた。私も、大衆酒場が板についてきたか。うれしいことである。(2008.11.4)

墨田区東向島6-13-10
17:30〜23:30 日祝休