橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

キルコーマン・ファーム・ディスティラリー

classingkenji2008-08-24

アイラ島でいちばん新しい蒸留所。なにしろ、創業は2005年である。実際にはいろいろ困難があって、まだ実現していないようだが、自家農場で生産した大麦を蒸留所でフロアモルティングし、燻蒸して仕込むという、100%自家生産を目指しているとのこと。だからキャッチフレーズは、"100% Islay, from barley to bottling"である。他のすべての蒸留所が海岸に面しているのに対して、この蒸留所は内陸の湖の畔にある。スコットランドでは、もっとも西に位置する蒸留所だとのこと。近くには広い麦畑があり、家畜も飼われていて、ポニーに乗って遊ぶなどの農場体験もできるようになっている。訪問したこの日は、あいにく休業日で、ほとんど外から眺めただけだったが、幸いにもフロアモルティングの部屋はドアが開いていた。中をのぞくと、モルティングは行われていなかったが、コンクリート製のフロアに麦芽が散乱している。作りの片鱗はみることができたから、よしとしよう。
ウイスキーとして売り出すためには、最低3年間の熟成が必要なので、実はウイスキーはまだ発売されていない。ただ、熟成まえの原酒がスピリッツとして少量だけ売り出されていて、このミニチュアボトルを2本入手することができた。1本は英国滞在中に試飲したが、強いもののバランスのいいピート香、まろやかな穀物の香り、とろりとした口当たりで、期待が持てそう。来年には発売されるはずだが、あまり注目されて値段がつり上がらないことを祈る。(2008.8.14)