橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ラフロイグ・ディスティラリー

classingkenji2008-08-22

昼食の後、アイラ島南部へ。最南端に近いポートエレンの近くには、アードベッグ、ラガブーリン、ラフロイグという3つの蒸留所がある(ちなみに、以前はポートエレンという蒸留所もあったが、現在は閉鎖されて精麦所だけが操業している)。アードベッグとラガブーリンは、外観を眺め売店をのぞくだけにして、ラフロイグへ。ラフロイグは、アイレイモルトのなかでもアードベッグと並んで個性の強いウイスキーで、まるでクレオソートのような強烈な香りが特徴。実は、私のいちばん好きなウイスキーである。ここの見学ツアーは、すばらしかった。ともかく、隅から隅までみせてくれる。写真でだけ知っていたフロアモルティング(木の床に湿らせた大麦をまいて発芽させ麦芽を造ること)のようすや、麦を求めてときおりネズミの走るフロア、修理中でゴミが散乱した燻蒸釜、強烈なスモーク臭がただようマッシュタンの内部まで。ラフロイグの個性の元になる燻製麦芽も、手に取って試食することができたし、使っているピートも手にとって臭いをかぐことができた。さらには昨日詰めたばかりの木樽に、指を突っ込んで原酒を体感させてくれたのに驚いた。ちなみにラフロイグにはフレンズ・オブ・ラフロイグという会員制度があり、私はその会員。会員が蒸留所を訪れると、敷地のうちの1平方フィートの所有者であることを示す証書、そして賃料としてミニチュアボトルを1本、もらうことができる。関心のある人は、ラフロイグのホームページへ。ラフロイグにはもっとも一般的な10年もの、15年もの、カスクストレングス、小さな木樽で熟成させたクオーターカスク、各種の長期熟成ものなどいろいろあるが、10年ものが十分美味しく、コストパフォーマンスが高いと思う。日本でも、少し大きめの酒屋なら売っている。(2008.8.13)